イオンクラフト

この実験は高電圧(数十 KV)を使用しています。高電圧を扱う技術を持たない人は決してまねをしないでください。また、実験を行なう場合は自己責任でお願いします。本ページは責任を負いません。

注意事項(必ず読むこと

このサイトで紹介しているディロッド発電機ウィムズハースト起電機では、おそらく数十KVの電圧の静電気が発生しています。私はこれらの起電機の電極に触れ、しびれたことはありますが、死んだことはありません(心臓が弱い方は起電機の静電気でも危ないかもしれませんのでマネはしないで下さい)。しかし、もし私が濡れた手で家庭用の100Vの電源にふれ続ければ確実に死にます。
電圧だけ見ればウィムズハースト起電機の電圧は家庭用100Vの数千倍です。しかしながら、ウィムズハースト起電機の場合、電圧は高くとも電極に蓄えられている電気量が小さく、流れる電流も瞬間的なものになります。結果、電圧は高くても人体に与えられる全エネルギー(ダメージ)はごくわずかなものとなり、感電死するようなことは(普通は)ありません*1
これに対し、家庭用100Vではコンセントの向こう側で発電所が休みなく大電流を送り続けています。したがって、ふれ続けていれば際限なくエネルギー(ダメージ)が人体に与えられ致命的なことになります(コンセントの場合、電流が50Hzの交流である(心臓のリズムを狂わす)ということも致命的です)。イオンクラフトの電源の場合、電圧はウィムズハースト起電機と同程度かも知れませんが、その背後には発電所からの電流が休むことなく供給されていることを忘れてはいけません。瞬間的に離れれば大丈夫かも知れませんが、感電による筋収縮のために体が電極を握ったまま動けず電極から離れられなくなりそのまま感電死することもあります(この最悪のパターンを防ぐ触り方というものもありますが、それが答えられない人はイオンクラフトを作るのは考え直した方が良いと思います)。
なお、感電とは別の注意事項として、イオンクラフトを空気中で稼動させると放電のためにオゾンが発生することが挙げられます。オゾンは人体にとって有害なので、イオンクラフトの実験を行なうさいには換気に十分気をつけてください(静電誘導型発電機を動かしている時にもオゾンは発生しています。換気してください)。

概要

イオンクラフト(リフター)は、空気中で非対称な電極に高電圧を印加する際に生じるイオン風を利用して空を飛ぶ装置です。設計にはBlaze Labs Research PagesLifter Simulator for Windowsを利用しました。

実験装置の全体像

イオンクラフト本体(全重量:約 4 g)
  • 骨格:2mm角バルサ材(一部を紙やすりで削って軽量化)。正三角形の1辺は300mm
  • コレクター:アルミホイル(厚さ12マイクロメートル、家庭用の普通に販売されているもの)
  • エミッター:直径0.2mmの錫メッキ銅線(ビニール導線の中身を使用)
  • エミッター−コレクター間距離:26mm
電源装置

パソコンのディスプレイ(ブラウン管と、GND間の高電圧を利用)

赤い導線(プラス極。ブラウン管に接続)がイオンクラフト本体のエミッタ(上部の銅線)に、黒い導線(マイナス極。回路のGNDに接続)がコレクタ(アルミホイル)に接続されます。エミッタ−コレクタ間の電圧は数十kV程度と思われます(測定してないので詳細は不明)。赤い導線の途中にある黒い部分の中には、過剰に電流が流れてモニターが壊れるのを防ぐための抵抗(500kΩ,2W、実際には1/4W抵抗を適当に組み合わせて代用)が入っています。

イオンクラフトの飛行実験

エミッタ−コレクタ間にディスプレイからとった高電圧を印加するとイオンクラフトが浮上します。エミッタ−コレクタ間の間隔が小さすぎると、大きな放電が生じてディスプレイが壊れたりバルサが燃えたりすることがあるので、ディスプレイの電圧を、様子を見ながらスライダックで徐々に上げていくのが安全です(私はそのようにして実験しました)。
 イオンクラフト浮上前
 イオンクラフト浮上中
足に結び付けてある糸は姿勢制御用です(これがないと高電圧の物体がふらふら飛び回って大変怖いことになります)。なお、撮影は東工大ロボット技術研究会の部室で行ないました。短いですが、動画も載せておきます。

イオンクラフトの動作原理

準備中。とりあえず旧サイトを見て下さい。

*1:コンデンサーの容量をC、電圧をV、電気量をQとすると、コンデンサーの蓄える電気エネルギーEはE=QV/2=CV^2/2で与えられます。ウィムズハースト起電機の電極の場合は、Cの値が小さいので、たまる電気エネルギーは致命傷を与えるほどにはなりません。ただし、Cの大きさが十分大きいコンデンサー(ライデン瓶)にウィムズハースト起電機を接続すると、電圧は同じでも蓄えられる電気エネルギーが増加し、静電気でも致命傷を与えることがあります。A.D.ムーア著「静電気の話」によれば『人間の体を通る放電のエネルギーが10 ジュールをこすと、生命に危険を及ぼし、4分の1 ジュールでも大きなショックを与えることが知られている』そうです。