Table-Top Laboratory ブログ版 開始
主に静電気・高電圧系の実験を扱っていた TTL 〜Table-Top Laboratory〜 のブログ版です.TTLの記事を徐々に移行し,気が向いたときに新しい実験を追加していくつもりです.
このブログに掲載予定の実験はほぼ(というか全て)高電圧を扱います。危険なものが多いので,実験を行なう場合は自己責任でお願いします。本ページは責任を負いかねます。
リンクは自由にしていただいてかまいません。また、本ページについて質問・訂正などがございましたらコメントあるいは下記のメールアドレスにお願いします(お手数ですが、_at_は@に打ち直してください)。
E-mail : e_stein_physik_at_yahoo.co.jp
電気力学テキスト
もう長いこと更新していないのですが、最近、以前から入手したいと思っていたメルヒャーの電気力学の教科書
電気力学〈2〉場,力,運動―MITコアカリキュラム (1970年)
- 作者: J.R.メルヒャー,大越孝敬,二宮敬虔
- 出版社/メーカー: 産業図書
- 発売日: 1970
- メディア: ?
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Electromechanical Dynamics | MIT OpenCourseWare
この教科書(特に2巻の7章)では、ケルビン発電機やヴァンデグラフの等価回路を解説しているなど、(普通の物理の教科書には載ってない)かなりコアな電磁気学を取り扱っています。なお、2巻に相当するものはリンク先の"PART II"から読むことができます。
ガイガーカウンタ
東京の実家の親に「あんた放射線とか測れないの?」と無茶ぶりされたため、ラジオペンチさんのページを参考に急遽ガイガーカウンタを自作しました。実家に帰る直前に急いで制作したため、オリジナルの要素を入れる暇もなく、ラジオペンチさんのもののほぼコピーです。(*_*;)
概要
使用した電子回路などはラジオペンチさんのページにあるものと同じです(ただし、カメラのフラッシュ基板として手持ちの古い型版のものを使ったため、GM管への印加電圧調整用の抵抗(R1, 200k)を、後から調整できるように可変抵抗(500k)に変更しています)。いつものことですが、高電圧を使う回路なので製作する場合は自己責任でお願いします。
GM管はヤフオクで入手したSBM-20で、私が入手した時点では1本 2100円(送料別)でした。電子部品も含め総製作費は3000円ちょいです。
外観はこんな感じ。100円ショップで売っていたペンケースに収納しました。
内部はこんな感じ。GM管はホットボンドでケースに固定しています。
動作の様子
デジカメ撮影のため音が入っていませんが、カウントすると一応クリック音がします。
デジカメの撮影時間制限で動画は1分で終わっていますが、この時のカウント数は1分間で16でした。
ガスランタンのマントルの様な線源があれば良かったのですが、わざわざ買うのも何なので、とりあえずカリウムの多そうなバナナを置いた場合と比較しました。
(念のため書きますが、別にバナナが放射性物質で汚染されている訳ではなくて、バナナに栄養として含まれるカリウムに、自然存在比0.012%で放射性同位体のカリウム40が含まれているので使用しました)。
この時のカウントは1分間で21カウントでした。何も無い時よりも少し増えていますが、放射線の検出がポアソン過程だと思えば、カウントに対してくらいのバラツキ(21カウントなら)は余裕であるものなので、何も線源が無い時に比べて有意にカウントが増えたとは言えませんね。
イオンクラフト revisit 経過報告
直流高圧電源についてはCUP's Laboratoryさんの直流高圧電源装置を参考に目途が付いているのですが、2mm角のバルサ材が近くで入手できないためまだ未完成です。東京に居た時は東急ハンズで買えたのですが…。京都で2mm角のバルサ材が手に入るお店をご存じの方が居れば教えて下さいm(_ _)m
イオンクラフト revisit
どうやら最近、アニメの影響でイオンクラフトの動画の再生回数が伸びているみたいです。もともとのページがやっつけだったので、原理の説明を増やしたり、時間があれば2号機を作ろうと思います。とりあえず以前放置していた飛行原理説明を(普通はわりと省略しがちなところも含めて)書いていこうと思います(しばらくは編集途中な感じになります)。
概要
イオンクラフト(リフター)は、空気中で非対称な電極に高電圧を印加する際に生じるイオン風を利用して空を飛ぶ装置です。どんな物かは以前の記事を参照のこと。
飛行原理
イオンクラフトの飛行原理は「ビーフェルド-ブラウン効果」(以下BB効果)と呼ばれることが多いようです。これはWikipediaの記述を引用すると「電極間に高い電圧をかけ、片側の電極を放電し易い尖った形状にすると、放電によりイオン化した気体の移動によって、電極に推力が発生しているように見える現象」です。この現象を以下でちまちま説明していきます。
BB効果を理解するのに知っておいた方がよさそうなこと1:非対称電極コンデンサの作る電場
イオンクラフトでは電極の形がプラスとマイナスで非対称であるということが重要になります。このような状況でどのようなことが起きるか考察してみます。
まず、実際の電極とは少し形が違いますが図1のようにプラスとマイナスで電極の形が異なるコンデンサを考えます。電極間には電圧Vをかけ、両極はそれぞれ+Q、−Qの電荷をそれぞれ持っているとします。さて、高校物理ではガウスの法則として以下のようなことを習います。
「任意の閉曲面を貫く電気力線の総本数は、その閉曲面内の電荷の総和を誘電率で割ったものに等しい」
言いかえれば、+Qの電荷を持った電極からは本の電気力線が出ていることになり、−Qの電荷を持った電極には本の電気力線が入ってくることになります(図2)。
ここでこの電極が作る電場Eに注目します。電場Eは「電気力線の密度」に比例するので、電気力線の集中しているプラス電極の周りに近づけば近づくほど電場は強くなることになります(図3)。
BB効果を理解するのに知っておいた方がよさそうなこと2:誘電分極と誘電体が電場から受ける力
プラスチックや空気分子のような誘電体は、電気は通しませんが、電荷を近付けると(電場をかけると)表面にプラスとマイナスの電荷が現れます(図4)。これを誘導分極と言います。さて、このように分極した誘電体は電極からどのような力を受けるでしょうか?まず高校物理で出てくるような並行平板コンデンサの作る電場中に誘電体を入れる場合を考えます。この場合、誘電体は分極しますが、対称性から明らかに誘電体は力を受けません(誘電体の上の方はマイナスなのでプラス電極に引かれるが、下の方はプラスなのでプラス電極に反発される。マイナスの電極についても同様)。この「対称性」をコンデンサの電極の形を非対称にすることで破ってやります(図5)。一見すると、「誘電体の上の方はマイナスなのでプラス電極に引かれるが、下の方はプラスなのでプラス電極に反発される」というのは変わらないように見えますが、実は先に述べたように非対称コンデンサではプラス電極に近ければ近いほど電場が強くなるので、誘電体の上の方で誘電体が受ける力と誘電体の下の方で誘電体が受ける力には差が生じます(図6)。したがって、この場合、誘電体全体では上向きの力を受けることになります。
この図だけ見ると、非対称な電極というのが随分特殊なように思えるかもしれませんが、例えば、ティッシュペーパーでこすった塩ビ管はマイナスの静電気を帯びますが、これが作る電場は一様ではない(塩ビ管に近づくほど電場が強くなる)ので、誘電体、例えば紙きれを近づければ紙切れが塩ビ管に引き寄せられます。
BB効果を理解するのに知っておいた方がよさそうなこと2:電場による空気のイオン化
BB効果ではイオン化した空気の流れが重要になります。そこでまず「空気がイオン化する」のに必要な条件を考えます。
高校化学ではイオン化エネルギーというのが出てきます。これは原子をイオン化するのに必要なエネルギーのことで、例えば基底状態の水素原子から電子1個を引き離すのに必要なエネルギー(第一イオン化エネルギー)は13.6 eV、すなわち水素原子の中心と無限遠方との間に13.6 Vの電位差をつけてやれば電子を引き離せます。
たった13.6Vでいいのか、と思うかも知れませんが、これは水素原子の中心にマイナス電極、水素電子の外にプラス電極をおいてそこに電圧をかけた場合の話であって、普通はそんな電極を水素原子の中心に置くことはできません。実際にできるのは「水素原子の電子が、水素原子の大きさくらい動くだけで13.6 eVの運動エネルギーを得られるような電場」をかけることです。水素原子の大きさはボーア半径程度ですから、電場をかけることで水素原子をイオン化させようと思えば、それに必要な電場強度はV/m程度になります。
書籍紹介
興味を持って連絡してくださる方がいたので、できるだけ更新が空きすぎないようにしたいのですが、なかなか新しい実験をする時間が取れないません。せっかくなので、書籍紹介でもしようと思います。
Make:Tokyo Meeting 03 の主催者であるオライリー・ジャパンの発行するモノ作り雑誌 Make:technology on your time (日本語版) の最新号にウィムズハースト起電機の制作記事が掲載されていました。
Make: Technology on Your Time Volume 07
- 作者: オライリー・ジャパン
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2009/07/10
- メディア: 大型本
- 購入: 10人 クリック: 54回
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記事に載っている方法で作ったことがないので、本当にこの記事通りに作ってうまく発電するのかは分からないのですが、ウィムズハースト起電機に興味がある方は、目を通してみてはいかがでしょうか?
(表紙と記事の冒頭に放電している写真が貼ってあるのですが、その写真を見ると私のより放電距離は長そうに見えます。具体的な最大放電距離を知りたいところです。せめて「静電気振り子」の動画じゃなくて、放電の様子の動画を紹介してくれれば良かったのに!*1 )
Maka: Tokyo Meeting 03 参加報告
先週から書いていましたとおり、Make:Tokyo Meeting 03 に参加してきました。
私が間借りした「幻燈工房」さんの展示スペースはこんな感じ。
私の展示品は、予告通りウィムズハースト起電機です。
湿気が多い中でしたが、なんとか1 cm 程度の火花放電*1は維持し、実演しつづけることができました。さすが Make のイベントというだけのことはあり、こんなマイナーな発電機を「作ったことがある人」や「今作っている人」までいて、吃驚でした。それ以外にも、ウィムズハースト起電機に興味を持ってくれる人が多数おり、実に製作者冥利につきるイベントでした。
展示場所を分けてくださった「幻燈工房」さんのメインの展示品はこちらの「1円玉飛ばし」。
コンデンサにためた高電圧でコイルに瞬間的に大電流を流し、その時に1円玉に流れる渦電流とコイルの磁場との反発を利用して1円玉を1 m 以上打ち上げます。使い捨てカメラの回路を流用してるのでとっても安あがり。私も昔 似たもの を作っていましたが、今回展示したものは、「幻燈工房」のなおきりん氏とともに色々と改良を加えたものです。(実はこの「1円玉飛ばし機」について、なおきりん氏と私との共著の制作記事が エレキジャック 2009年 05月号 [雑誌] に掲載されています A^_^;)″。)
自分の展示もありそれほど多くは見て回れませんでしたが、MTM 03 には、(こんなマイナーな発電機と比べるのがおこがましいような)非常にレベルの高い、面白い展示が多数ありました(きっといろんな人がブログに書いているはずなので紹介はそっちにお任せします…)。MTM 04 が開催される時にはぜひまた参加したい!