ディロッド静電誘導型発電機1

概要

ディロッド*1静電誘導型発電機1は静電気を起こす発電機です。ただし、通常私たちが想像するように「こすって」静電気を起こしているわけではなく、「静電誘導」という全く別の現象を利用して静電気を発生させています。冬場の調子の良いときは8mm程度の空中放電が見られます。設計などは A.D.ムーア著「静電気の話」(原著:A.D.Moore, "Electrostatics")の「ディロッド・ジュニア」を参考にしました。

ディロッド静電誘導型発電機1の全体像

 ディロッド発電機1 (前から撮影)
 ディロッド発電機1 (後ろから撮影)

制作手順

詳細はMooreの本を参照してください。中心のアクリル円板は自作も出来ますが、800円くらいで東急ハンズで買うこともできます。

動作原理

  1. 電極(+)の電荷によって、真鍮棒(○)に電荷の偏りが生じる (静電誘導)。
  2. 円盤が時計回りに回転し、電荷を持ったまま真鍮棒が中性ブラシ({\rm \Omega})から離れる。
  3. 真鍮棒の電荷が電極に回収され、電極の電荷が増加する。
  4. 1.に戻るが、電極の電荷が増大しているため誘起される電荷はさらに多くなる。

原理を見ればわかるかと思いますが、この発電機では、最初の時点で両側の電極に電荷の差が全くなければ静電気が発生することはありません。しかしながら、大抵の場合は人間の手が電極に触った際に生じる静電気や空気中の荷電粒子のために、両側の電極に電荷の差が全くないということはなく、ほぼ100%電位差があります。そしてわずかでも電位差があれば、円盤の回転と共に電位差は急激に増大し、数秒から数十秒で火花放電が起きるほどの静電気が発生します(「静電気の話」ではこの過程を「複利的に電荷が増大する」と表現しています*2)。ただし、どちらの電極が正になるかは毎回偶然に支配されます。

Electrostatics: Exploring, Controlling and Using Static Electricity/Includes the Dirod Manual

Electrostatics: Exploring, Controlling and Using Static Electricity/Includes the Dirod Manual

*1:Mooreによると「ディロッド」という名前は、円板(disk)の di と棒(rod)からつけたものだそうです。

*2:ディロッド発電機そのものではありませんが、ディロッド発電機と同様、静電誘導を利用して発電するケルビン発電機については電荷が指数関数的に増えることを示す簡単なモデルがあります。ケルビン発電機の実験が成功したら後日そのモデルを紹介する予定です。